相愛-かたち-

FD進めなきゃ、と言いつつネタが膨らんでしまう綾葉。
まあ、クリスマスまでに追いつかないとって感じなんですがー。




俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校2年生だ。
学年が上がって3ヶ月半。
今日で1学期も終わりだ。


「光司、成績どうだったよ?」
「ぼちぼち……って、もう見てんじゃねーか」
俺の成績表を眺めている手癖の悪い男は大森透。
中学時代からの友人だ。
「俺のなんか見たって面白くないぞ」
「……確かに」
今学期の成績。体育5その他オール3。
「いや、ある意味すごいのかも知れないけど」
「どうせ翔の方がすごいだろ」
「俺がどうした?」
気配を感じさせずに現れたのは結城翔。
俺との関係は、幼馴染ってやつだ。
「透がお前の成績を知りたいんだと」
「ふむ。別に面白いものでもないぞ」
「何で2人して同じ反応なんだよお前ら……」
翔が差し出した成績表をのぞくと
「予想通り、か」
「今更驚くことでもないよなあ」
見事なまでにオール5。こいつは昔からこうだ。
「空沢もこのくらいの実力はあるだろう」
「俺は補習にならなきゃいいんだよ。
適当に手を抜けば……」
「大森〜!いるか〜?」
「げ」
俺の言葉をさえぎって飛んでくる甲高い声。
我らがクラス担任、飛鳥川朋子先生(自称18歳)だ。
「よ〜し、お姉さんと一緒に夏休みの補習計画(スケジュール)立てような」
「ぅあーん……」
引きずるように職員室へ連行される透。
「……大森は今年もか」
「らしいな。っと、俺この後予定あるんだわ」
「そうか。では、またな」
「おう、じゃーな」
鞄に成績表を突っ込んで教室を出る。


靴を履き替え、校庭にある桜の木の下へ。
いつもの待ち合わせの場所だ。
「おそーい」
そこに立っているのはポニーテールの美少女―――夜舞月綾葉。
俺の可愛い恋人だ。
「んなこと言ってもまだ5分前……」
「つべこべ言わない。男なら潔く」
「……すみませんでした」
「はい、よくできました」
綾葉と出会ってすでに3ヶ月。
完全に上下関係が構築されている。
「それじゃ、行こ?」
「そうだな、綾葉先輩」
「……うー」
彼女は1学年上なのだが、先輩呼びすると拗ねる。
誕生日の関係で同い年なんだからとか壁を感じるからとかいう理由だ。
もちろん、敬語も基本的に禁止だ。
「光司ってたまに意地悪だよね」
「綾葉だけ特別だよ」
「そんな特別扱い嬉しくないっつーの」


「―――でさ、やっぱ海だよねー。
ってことは新しい水着も欲しいなあ。
あとは……うん、1泊でもいいから旅行とかも行きたいな」
明日から夏休み、と言うことで自然と話題はそっちへ向かうのだが。
「それでいいのか受験生」
「いいの。高校最後の夏休みだもん、楽しまなきゃ」
「そんなこと言ってると来年夏休みがなくなるぞ」
「だいじょぶだって。あたしはやる時はやる女だよ」
「それは知ってるけど」
「今学期の評定平均4.8出したから問題なしっ」
「……まじで?」
「まじで」
やってくれるぜこいつ……
「っと、もう着いちゃった。光司といると時間経つの早いね」
いつの間にか大きな門の前に到着。まあ、綾葉の家なんだけど。
「それじゃあ、後で連絡するから夏休みは全部空けておいてね」
「はいはい」
どうせ他に当てもないし。
「じゃ、まったねー」
「じゃーな」
綾葉が門を開けるのを見届けてから踵をかえす。と、
「あ、ちょっと待って」
後ろから引き止められる。
「ん?」
振り向くと至近距離に綾葉の顔。
「ちゅっ」
唇に触れる柔らかな感触。
「……はえ
思わず間抜けな声を出してしまった……
「へっへー。奪っちゃった」
いやまあ確かにファーストキスなんだけどそうじゃなくて。
「あ、いちおーあたしのファーストキスだからね」
「……そういうのってもうちょっとムードとか考えないか?」
俺は別に気にしないけど。
「いいのいいの。これからいくらでもできるんだから」
「そういうもんなのか」
「あー、でもちょっと恥ずかしいね。うん、じゃあまたねっ」
たたた、と門の中へ駆け込む綾葉。
これからいくらでも、か……
綾葉の唇の感触を思い出しつつ、帰路につく。


―――また1つ思い出のできた、夏休みの始まり。