女王-げぼく-

タイトルがネタ切れ気味。
二字熟語と平仮名3字って難しいなぅ。



俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校2年生だ。
学祭を翌日に控えたある秋の日。
クラスの準備を終えた俺は、可愛い恋人―――夜舞月綾葉と帰路についていた。


「綾葉の所は何やるんだ?」
「うちはフツーに喫茶店だよ」
「ってことは綾葉も接客か?」
「あ、そうそう。それなんだけどさ。
2日連続で午前中仕事になっちゃったから、一緒に回るの午後でいいかな」
「俺はそれでもいいよ。どうせ予定ないし」
「あれ、光司のクラスって何やるの?」
「……メイド喫茶
「うわ」
思い切り引かれた。当たり前か。
「ま、おかげで男は裏方のみ。力仕事担当の俺は準備と後片付けだけで当日はヒマ、と。
まだ明日の朝の作業は少し残ってるけどな」
「光司は接客しないんだ。残念」
「俺のメイド姿が見たいのか」
「……いや、その、そうじゃなくてね」
「今一瞬すごい気持ち悪いもん想像しただろ」
返答をためらった間の微妙な顔を俺は見逃さなかった。
「そ、そんなことないにょ」
「動揺しすぎ」
にょって何だ。
「ただ、ちょっと光司にご主人様って呼ばれるのもいいかなって。
考えた画がたまたまメイド服着た光司だっただけで」
「やっぱり想像したんか。
つーか、綾葉だったらご主人様よりお嬢様だろ」
「……ちょっとお嬢様って呼んでみて?」
「何で俺が」
「……お願い」
胸の前で手を組み、上目遣いできゅっと首を傾げる。
……反則だ。この“お願い”に抗える訳がない。
「……かしこまりました。お嬢様」
なるべくそれっぽい口調を意識する。
「あ、いいかも」
「何がだよ」
「執事とかやってみる気ない?光司なら似合うよ」
「これだけで似合うとか言われちゃたまらねぇよ。
綾葉が雇ってくれるんなら考えるけどな」
全く、女王様気質と言うか何と言うか。
綾葉が上に立つのが似合ってるだけだっつーの。
「んー、それは嫌だなあ」
「何でだ?いつも一緒にいられるーとか言うかと思ったんだが」
「確かに光司と一緒にいられる時間が増えるのは嬉しいし、
お嬢様って呼ばれるのも何かいいんだけどさ。
やっぱり光司とは対等な立場でいたいもん」
「お前はどうしてそういうことをさらりと言えるかね」
「へっへー。光司相手に本音隠したってしょうがないじゃん」
「あーあー、そうですか」
ダメだ、もう絶対綾葉に勝てない気がする。
「あ、でもさ。たまにはお嬢様って呼ぶのもアリね」
「はいはい、わかりましたよ。お嬢様」


―――綾葉のカリスマ性を再確認した、そんな日。