夢見-さそい-

で、やっぱりこっち書いてるんですけどー。
どこまでこの激甘空間は続くんだろう。




俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校2年生だ。
体育祭当日の昼休み。
俺は屋上に座っていた。


「くー……すー……」
俺の肩にもたれて寝息を立てているのは、俺の可愛い恋人―――夜舞月綾葉。
普段なら校庭で弁当を食べるのだが、あいにく今日は使用不可。
仕方がないので屋上に来ているという訳だ。
「うにゃ……ん……」
午前中にあった3年生の競技にフル出場した綾葉は、
少し休んでいる間に寝てしまい、
「んん……光司ぃ……」
現在に至る、と。
さっきから寝言で名前を連呼されて妙にくすぐったい。
「……可愛い奴め」
綾葉の寝顔を見るのは初めてだが、やはり絵になる。
「すー……すー……」
そろそろ午後の競技が始まるから起こさないといけないんだけど。
「すー……すー……」
規則正しい寝息を聞いていると、起こすのも忍びない。
「すー……すー……」
……と言うか、規則正しすぎる気もする。
「すー……すー……」
「起こすの可哀想だし、置いて行こうかな」
俺の言葉に、綾葉の身体がピクッと反応する。
やっぱり狸か……
「いや、このまま寝込みを襲うのもありか?」
「っ……すー……」
「……綾葉、起きてるだろ。
さすがに今のリアクションは大きすぎるっつーの」
「……まだ起きてないー」
「じゃあそれは寝言か?」
「眠り姫は、王子様のキスで目を覚ますんだよ」
「誰が王子様だ」
姫は別に否定しないが。
「んー」
目を閉じたままじっと待つ綾葉。
「ったく、しょうがねぇなぁ」
そっと肩を抱き寄せ、
「……んっ」
唇を重ねる。
「……へっへー」
「ほら、起きたんならさっさと行くぞ」
綾葉の手を取って立ち上がる。
「あ、照れてるー」
「うるさいなぁ。柄じゃないんだよ、こういうのは」
「だいじょうぶ。光司はあたしの王子様なんだから、ね」
ぎゅっと綾葉が腕に抱きついてくる。
腕に押し当てられる柔らかいものを感じつつ、
綾葉の寝顔も見られたし悪くないかな、と思う。


―――2人の距離がまた縮んだ気がする、そんな秋晴れの一日。