はいはい起留起留。
起留出ないけど。その割にずっとニヤニヤしながら書いてたけど。
いいんだ。うん、いいんだよ。色々。
「っつ〜・・・」
頭痛。
病気とかそんなんではなく、殴られたらしい。
らしい、というのは俺にもよくわかっていないからだ。
起留が新しい起こし方を試したとか何とか。
ったく、あの目覚まし・・・
「あの、どうかなさいましたか、お兄様?」
「ああ、ちょっとな」
心底心配そうな顔をしている彼女は竜胆寺絆。
俺のことをお兄様と呼んで慕ってくる、財閥の御令嬢だ。
「実はかくかくしかじか」
絆に、我が家の暴力目覚ましについて話す。
「まあ、それは許しがたいことですわ」
「いや、そんな大げさなことでもねーよ」
「いいえ。お兄様に暴力を振るうなど、言語道断です」
パチン、と絆が指を鳴らす。
すると、どこからともなくメイドが現れる。
今更この程度で驚く奴はこのクラスにはいない。
「お兄様のお気に召すような目覚まし時計をいくつか用意なさい」
「はい、かしこまりました」
メイドの姿が消えて再び現れたとき。
俺の机の上に目覚まし時計が5、6個出現した。
「お受け取り下さい、お兄様」
「こんな沢山はいらないんだけど」
「でしたら、好きなものをお選び下さい」
「んじゃ・・・これかな」
俺が選んだのは、デジタル表示のシンプルなもの。
とりあえず目覚ましとして使えれば何でもいい。
「ねえ、絆。アタシも1個もらっていい?」
突如、隣の席から口を挟んできたのは沢木椿。
何かあるとすぐ吐血する自称病弱美少女だ。
「ええ、構いませんわ」
「ありがと」
「礼には及びません。
お兄様の為に用意しただけですから」
「あっそ」
何でこの2人はいちいち突っかかるんだ。
「ありがとな、絆」
「はい。お兄様のお役に立てて光栄ですわ。
また何かありましたらいつでもお申し付け下さい」
優雅に会釈をして絆が自分の席へ戻る。
気付けば机の上の目覚まし時計はメイドと共に消えていた。
そして、今が授業中であることなど最早誰も気にしちゃいなかった。