寂寥-ひとり-

これで2月は終わり。
綾葉ばっかり書いてる気が。




俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校2年生だ。
2月最後の金曜日。
俺は河原の芝生に寝転がって空を見上げていた。


平日の放課後。
いつもは恋人―――夜舞月綾葉と一緒に帰っている時間帯。
「ふぃ〜……」
国公立前期の前日ということで3年生は昼まで。
1人で帰るのも久々なのでこうしてのんびりしている。
「……」
のんびりしているのだが、何か落ち着かない。
在るべきものがここに無いと言うか。
いつの間にか、綾葉と2人でいることが日常となっているのを感じる。
10ヶ月。綾葉の言葉を借りれば“ずっと”一緒だった。
そう言えるだけの、密度の濃い時間を過ごしてきた。
……なんて、こんなのは俺の柄じゃないか。
ま、たまには1人でぼーっと考え事も悪くな
「あれ、光司?」
……何だろう、聞きなれた声が。幻聴?
「こんな所で何やって」
起き上がろうとした俺の顔を綾葉が覗き込む。
俺の頭の進路に綾葉の頭が割り込む形になり。
―――ゴン
「おおぅ……」
「っつ〜……」
再び寝転がる俺と、頭を抱えてしゃがみこむ綾葉。
「すまん、大丈夫か?」
「うん、へーき」
額をさすりながら、俺の隣に座る。
「でさ、こんな所で何やってるの?」
「俺は学校帰りに寄り道。綾葉は、明日は余裕?」
「うん。ちょっと息抜きに散歩って建前」
「本音は?」
「この時間帯なら光司に会えるかなーって。大正解だったね」
屈託無く笑う綾葉。
こういうのを眩しい笑顔、って言うんだろうな。
「ね、光司」
「ん」
「やっぱりあたし、光司のことが大好き」
「……そうか」
突然何を言い出すかと思えば。
何度言われてもこれには慣れない。
嬉しいような恥ずかしいような複雑な感情。
「来週からは、また一緒に帰ろうね」
「ああ」
そう、か。
綾葉もきっと俺と似た寂しさを感じたのだろう。
俺にとって綾葉が大きな存在であるのと同様に、
綾葉にとって俺の存在が大きいというのは少し嬉しい。
「楽しみにしておくよ」
だから俺も、できる限りの言葉で返す。
拙くてもいい。綾葉ならわかってくれるから。
「うんっ」


―――改めて綾葉を大切だと思った、晩冬の1日。