情愛-おもい-

綾葉だけはヒロイン視点になりません。
だから何だ。

俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校2年生だ。
3月14日、ホワイトデー。
いつも通りに弁当を食う昼休み。


「あったかくなってきたのに人少ないねー」
隣に座ってるのはもちろん俺の恋人―――夜舞月綾葉。
「ま、3年生は自由登校だしな」
受験シーズンも大体終わり、卒業式まで3年生はほとんど来ない。
昼飯を食って帰るだけの先輩もいるけど。
「あたしも光司が授業なかったら遊び放題なんだけどなー」
「それは俺に言われても困る。
こっちはまだ期末試験あるし」
「あ、そっか。じゃあテスト終わるまではデートもできないね」
「そんなに気合入れてる訳でもないけどな」
テストは適当に手を抜くのが俺だ。
「なら、デートする?」
「綾葉先輩のお好きなように」
「むー、先輩禁止ー」
「はいはい。
……ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
「綾葉、これ」
「ん、なーに?」
制服のポケットから包みを取り出し、手渡す。
「バレンタインのお返し」
「あー、すっかり忘れてたよ。お返しなんかいいのに」
「いや、そういう訳にもいかないだろう」
「一緒にいてくれれば、それが一番だよ」
「……そいつは恥ずかしい」
本気だ。本気の目だ。
「ねぇ、光司」
綾葉がすり寄って来る。嫌な予感がする。
「せっかくだから、甘い台詞とか囁いてみない?」
「……ったく、しょうがねぇな」
どうせ拒否はできないだろう。
口を耳元に寄せ、囁く。
「……好きだよ、綾葉」
「っきゃー!光司かっこいいー!」
綾葉が抱きついてくる。
ダメだ、顔が熱い。
いつになってもこれには慣れそうもない。
「あたしも、光司のこと大好きだよ」
「……知ってるよ」


―――春の訪れを感じる、そんな1日。