夏祭-ゆかた-

何とか書き上がりました・・・
タイトルが欲望丸出しなのは多分気のせいです。
いや、ホントに。独り占めしたいから詳しい描写避けたとかそんなことはないですよ?

俺の名前は空沢光司。
それなりに名の知れた大学に通う、大学一年生だ。
今日は近所の神社で夏祭り。
ということで例によって綾葉と2人で歩いているのだが。


「何で俺まで浴衣なんだろうな」
「へっへー。光司はどうせ私服で来ると思ったからねー」
綾葉の家に迎えに行ったら、無理矢理引きずり込まれて着替えさせられた。
しかも、綾葉の浴衣と柄が一緒だ。
「男の浴衣姿なんか面白くもないだろうに」
「そんなことないってー。色っぽいよ、光司」
「色っぽくても嬉しくないわい」
まったく。綾葉の浴衣を褒めるタイミングがなくなったじゃないか。
「まあまあ。せっかくなんだから、ね?」
「別に嫌なわけじゃないからいいけどさ」
「あ、光司!金魚すくいやろ、金魚すくい!」
「わかってるから、はしゃがない」
「こーじー。もうちょっと祭りを楽しもうっていう気はないの?
おじさん、2人分ね!」
「あんまりないかなあ……」
全力で楽しんでいる綾葉の隣にだらだらとしゃがむ。
「負けた方は罰ゲームね!勝った方の言う事を1つ聞くこと!」
「はいはい」
強引に俺に本気を出させる作戦らしい。いや、知らんけど。
「よっ、あ、待って待って」
「……」
何だか綾葉がオーバーな動きでをするせいで集中できない。
まあ、金魚程度の動きを見切れないようじゃ結城流の師範はやってられん。
「あっ、え、うう」
しかし、無駄な動きが多そうなのに全然破れそうにないな。
数は……互角か?
「やん、だ、だめだってばっ」
「……あ」
適当にやってた俺の気持ちが伝わったのか、割と簡単に破れた。
1、2、3……9匹か。
「そっちはどんな感じだ?」
「まっ、今話しかけないでっ!」
おぉ、本気の目で怒鳴られましたよ。珍しい。
「あ〜あ、光司が話しかけるから破れちゃった〜」
「それはどうもすみませんね」
「え〜っと……12匹かな。光司は?」
「俺は9匹。完敗だ」
「やたっ!じゃあ、光司は今日1日あたしの言う事を何でも聞くこと!」
「何だその願い事を増やす願い事みたいな反則技は……」
そもそもそれくらいは普段からやってる気もする。
「いいの。わかった?」
「かしこまりました、お嬢様」
「はい、よろしい。あ、おじさん。金魚返すねー」
飼う気ないから、と計21匹の金魚を返す。
「よーし、次行くよ光司っ」
「お手柔らかにお願いしますよ」
自然と腕を組みながら歩き出す。


―――結局いつも通りに綾葉のわがままを聞く、そんな夏の夜。