祝福-あかし-

空沢光司聖誕祭。
やってることはほぼいつも通り。

俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校3年生だ。
新学期が始まった直後。
俺の誕生日だったりする。


「こーじ。はい、あ〜ん」
「……いや、やらないから」
「ちぇ」
茶店で恋人―――夜舞月綾葉と向かい合ってケーキをつつく。
「よーし。じゃあそろそろプレゼント出しちゃおっかな」
「ん」
「じゃーん」
―――ひょこ。ぴこぴこ。
取り出したのは、猫耳。動いてますよ。
「これを着けたあたしをプレゼント、なんてどうかな。
で、光司とにゃんにゃんするとゆー」
「にゃんにゃんとか言うな」
うちの彼女はこういうことを本気で言う。
せめてもう少し羞恥心とか。
「じょーだんだって。はいこれ」
「む」
次に取り出したのは、銀色に輝く……
「きーほるだー」
「ああ、見りゃわかる」
『光司』と刻まれたネームプレートに蛇が2匹絡まっている。
サイズが小さい分とても精巧で、ついでに単なる銀メッキとかではなさそうだ。
高いんだろう。うん。
「ありがとう。大切にするよ」
「へっへー。気に入ってくれた?」
「ああ。ただ、1個だけ聞いていいか」
「にゃにかにゃ?」
とりあえずその耳を外せ。
「あんまり綾葉らしくないよな?
ぬいぐるみとかもらったらどうしようかと思ってたけど」
「そだね。光司は実用的な方が喜ぶと思ったし、かっこいい方が似合うでしょ」
「左様で」
前者は同意。後者は綾葉の主観なので流す。
「一応もう1回言っとくな。ありがとう」
「どういたしまして。
光司、あたしがいないからって瑠璃ちゃんに浮気とかしちゃダメだよ?」
「しないって」
「あたしだって、その、寂しいんだからね?」
「わかってる。なるべく会える時間作るよ」
「あと1年、頑張ろうね」
「……そこそこにな」
「むー!愛が足りなーい!!」


―――また1つ年を取った、綾葉と出会ってちょうど1年の春。