距離-いっぽ-

書いたと言いながら載せていなかった。
相変わらずこっち書いてるとすごくニヤニヤします。

俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校2年生だ。
人生で初めてできた恋人と初めて歩く通学路。
と言うか、つい数分前に告白されたばっかりだ。


「光司、って呼んでもいいかな」
幸せそうに漆黒のポニーテールを揺らし、少し照れたようにつり上がり気味の目を伏せる、
俺の隣を歩いている美少女が俺の恋人――夜舞月綾葉だ。
「はあ、構いませんが」
「あ、敬語は禁止ね。先輩後輩の前に恋人同士だし。
それに、光司は誕生日4月だからもう17でしょ?
あたしの誕生日は11月だから、それまでは同い年だもんね」
「わかりま……わかった」
強引だなあ、と思わなくもないが。
そもそもかなり強引な初対面から首を縦に振ったのは俺だ。
「あと、あたしのことは綾葉って呼んで。
先輩とかつけるのは距離を感じるから禁止。
はい、Repeat after me , Ayaha」
「……綾葉」
うっわ、何だこれ。男友達とか幼馴染とかの名前を呼ぶのとは全然違う。
かなり恥ずかしい。
温度の上昇する口元を思わず手で押さえる。
「む、もしかして照れてる?可愛いなあ、このこの」
うりうり、と脇腹を肘でつついてくる。
さっき桜の下で感じた凛々しさはどこへやら。
このぐらいの軽いノリがデフォルトらしい。
「こういうの、あんまり慣れてない?」
「お察しの通り。さっき17年の恋人いない暦に終止符を打ったばっかりなんで」
「そっか、それは光栄だね。初めての女ってとこかな」
「響きは妖しいけど、否定はしない」
色恋沙汰に縁の薄い人生を送ってきたおかげで、色々と意識してしまっているのは確かだ。
「あたしも光司が初めてだから、おそろいだね」
「それは……まあ、光栄だ」
そして意外だ。
相当人気があることは想像に難くない、俺にはもったいないくらいの美人なのに。
「覚悟しといてよ。恋人ができたらやりたかった色んな夢を叶えてくから。いっぱい付き合ってね」
「できる限り応えさせていただこう」
自分ではそれほど積極的にやりたいこともないが、求められれば応えていくのに吝かではない。
まだ実感が湧かないとは言え、恋人なのだから。
「硬いってば。もっと気軽にいこ?」
「むう。いまいち、こう、距離感が掴めん」
もう一歩が、近すぎる気がして踏み込めない。
遠慮なのか不安なのか、自分でもよくわからない感情。
「仕方ないなあ。手、つなご」
「何故」
「光司の気持ちの問題はどうしようもないけど、物理的な距離ってこのくらいでしょ」
有言実行、気楽に微笑みかけてくる。
……難しく考える必要は、ないのかも知れない。
遠慮でも不安でも、ここで躊躇するのは失礼だ。
恋人同士、近すぎてもいい。はずだ。
「そうだな」
半ば開き直って、差し出された手を握る。
「うんうん。もっと近くてもあたしはおっけーだよ」
勢いでやったことを後悔するぐらい恥ずかしいが、綾葉のこの笑顔が見られるなら悪くない。
などと、既に惚気た思考をしている辺り、俺も潜在的なバカップルの可能性があるな。
「あ、また照れてる」
「ほっとけ」


――一目惚れというものを遅まきながら理解した、俺の人生が変わった日。

で。見ての通り大昔の話を補完してるわけですが。
この辺の話が読みたいなーってのがあれば遠慮なくリクエストして下さい。
ネタさえあれば書けるもののネタがないという状況なので。