誕生日おめでとう麻里乃。
何やかんやで書けるものですな。
こちらもしーずんずスタイルですが。
しかし麻里乃ってこんなんでよかったんでしたか。
原作が今遥か遠い以下略。
「……こんなんで本当にいいのか?」
「ええ、構いませんわ」
麻里乃の髪に指を通してやると、気持ちよさげに目を細める。
膝枕である。
割とこっ恥ずかしい体勢ではあるが、まぁ仕方ない。
「誕生日プレゼントだっつってんだから、こんな安上がりなのじゃなくてもいいんだぞ」
「お金で買えるものは、お金で買えばいいんですもの。
あなたには、あなたからしか貰えないものがある。そうでしょう?」
「まぁ、なあ」
プライスレス、というやつか。
お金に執着している節もある麻里乃が言うと重みが違う。
とは言え。
「別にこれくらいだったらいつでもやってやるぞ?」
麻里乃が望むならいつでもどこでも応えてやれる程度の要求だ。
特別な日だから特別に、などと恩着せがましいことを言うつもりはない。
「遠慮しておきますわ。ここは……居心地が良すぎて、つい甘えてしまいそうだから」
「ずっと甘えててもいいんだけどな」
うにうに、と頬を突いてやると、嫌がるどころか積極的に頬擦りをしてくる。
口は悪いがあまりワガママとかは言わないやつなので、甘えてくるのは新鮮だ。
「そんなこと、私のプライドがゆふははひんへふほ」
和む。
「でも、こうして身体を預けられる相手がいるというのはいいものですわね」
「うむ」
無防備に身体を預けられると何かグッとくるものがある。
「恋愛授業に採用されてもいいぐらいだ」
「……またその話になるんですわね」
「色んな意味で印象が強いからなぁ」
初めは、嫌で嫌で仕方がなかった。
授業を通して、麻里乃と仲良くなった。
今や恋愛授業の信奉者にして体現者だ。
担当教師の個性が強すぎるという理由もあるか。
「こら。こんな時に他の女の顔を思い浮かべるのはマナー違反ですわよ?」
「……鋭い」
色気のある想像ではないが、思い浮かべたことは事実だ。
それにしても、こういう台詞を何の照れもなく吐けるようになった辺り、麻里乃も成長していると感じる。
「髪も伸びたしな」
貧乏パーマと自嘲する黄色の髪を撫でてやる。
「話が何一つ繋がってませんですわよ」
「俺の中では繋がってるからいーんだよ」
「ふん。やっぱりおぽんちですわね」
「うっせー」
やっぱりとか言うな。
「それで……そのおぽんちは長い髪の方が好きですの?」
「ん?いや、似合ってれば何でもいいが、まぁどちらかと言えば長い方が……ははあん」
「な、なんですの、そのいやらしい笑みは」
「麻里乃も俺の好みとかが気になっちゃうんだなぁ」
「べ、別にそういう流れだったから聞いただけで他意はねーですわよ」
「じゃあ、そういうことにしておこうか」
ぽふぽふと軽く叩くように撫でる。
「っく、その勝ち誇った顔と子ども扱いがムカつくんですわ」
「左様でございますか」
「……どちくしょー、ですわ」
いつもの決め台詞も、とろけた顔で覇気がない。
「愛してるよ、麻里乃」
「っさい、バカ。そういう台詞は安売りするもんじゃねーですわよ」
「在庫はまだあるから安心して受け取れ」
「……ふん。私だって、あ……愛してます、わ」
ああもう。可愛いなぁこいつは。
――そんなゆるさの、夏の一日。