『幼い頃の約束と帰ってきた幼馴染』

幼い頃の約束というと『おっきくなったらけっこんしようね!』ぐらいしか思いつきません。
王道です。ベタベタです。ベタベタの甘甘のイチャイチャです。
キャラの引き出しがそろそろ枯渇。どっかで見たようなキャラしか出てきません。
幼馴染感もあまり出せませんでしたねぇ。

行き交う人。
響くアナウンス。
遠くに聞こえるジェット音。
出会いと別れの交差するところ、空港。
「ほぁ〜……」
人待ち顔の少女、吉沢めぐみがため息を漏らす。
いや、彼女だけではない。
居合わせた人間のほぼ全てが、ため息を漏らし、目を奪われる。
大きなトランクを引いて颯爽と歩く美女。誰もが振り返り見惚れるほどの。
色素が薄めの茶と金の中間の長髪を翻し、迷いなく歩いている。めぐみの立っている場所を目指して。
「久しぶりね」
「……ふぇ!? あ、わたし!?」
声をかけられ、一拍置いてから周囲を見回し、間の抜けた顔で自分を指差す。
人を待っていたのは事実だが、待ち人のイメージと目の前の美女が重ならなかったのだ。
「吉沢めぐみ、でしょう? 人違いだったかしら」
「それは確かにわたしだけど……ってことは、琴音!?」
「ええ。村瀬琴音、無事帰国したわ」
「うわー、うわーうわー。綺麗になってて全然気付かなかったよ!」
「そう? ありがとう。めぐみは変わってない……とは言えないけれど。
あの頃の可愛い貴女のまま成長したのね。すぐにわかったわ」
「なーんかすっかり大人っぽくなっちゃってー。
昔は男の子に混じってやんちゃに暴れまわってたのにね」
「……改めて言われると恥ずかしいわね」
「っとと、忘れてた。おかえり、琴音」
「ただいま、めぐみ」
微笑み、抱き合う。十数年ぶりの再会に、自然と距離が近付く。
「でも、出迎えはわたしだけ? もっとたくさん呼んで盛り上がればいいのに」
「それも悪くはないけど。約束を果たす為に日本に戻ってきた以上、まずはめぐみに会いたくて」
「……約束?」
琴音の言葉に、思わず首を傾げる。
物心付く前からの親友。ゆえに、約束と言われても心当たりが多すぎる。
「えーっと、どれだろ。ヒント」
「ヒントは、そうね。『大きくなったら』かしら」
「『大きくなったら』……」
その一言を元に、記憶を辿る。
「……あ」
干支が一回りしても色褪せぬ記憶。フラッシュバックする、幼い日の二人。


『おおきくなったら、めぐみをおよめさんにする!』
『おおきくなったら、ことねのおよめさんになる!』


「え、あ、ええ? これじゃないでしょ、うん」
「たぶんそれよ、めぐみ。結婚しましょう」
「はは、ははははは……冗談でしょ?」
「15年越しの想いを冗談で片付けられると、流石に泣くわよ。
それとも、あれは冗談で言っただけなのかしら……」
「ち、違うよ! 違う、違うの。逆なのよ。
琴音は冗談で言ってるだけなんだろうと思って、それで、わたしは」
「いいわ。もう、それ以上は」
言い募ろうとするめぐみの唇を、琴音の人差し指が遮る。
「私達の仲に、余計な言葉は要らないでしょう?
大好きよ、めぐみ」
「……琴音、ことねぇっ!!」
感極まっためぐみが、琴音の胸に顔を埋める。
「泣き虫なのは変わらないのね」
「ぐす……おかえり、琴音。ずっと、待ってた」
「ただいま、めぐみ。私も、この日をずっと待ち望んでた」
出会いと別れが交差し、止まっていた時間が動き出す。
想いは、加速する。