ここ数日の日記を見ていただければわかるとおりの難産です。
オチが中途半端なのは自覚してます。
こんなんじゃ満足できませんが、タイムリミットです。
一方その頃PITでは、も考える余裕がありませんでした。ドちくしょう。
機会があればすずめはどこかでリベンジしたいですなぅ。
年末の誕生日でしょうか。遠いわ。
「ふあっ……」
「そういう声を出すなよ。ドキドキするから」
「ゔ。……ん? ドキドキしたの?」
「あぁ、うん、そこそこは」
すずめの髪を梳いてやりながら、他愛もない会話のキャッチボール。
ホワイトデーのお返しということで、すずめの要望でこういうことになっている。
マッサージで返すというのは、流石に彼氏が相手でも抵抗があるらしい。
俺としても、すずめほどマッサージが得意なわけでもない。
綺麗な髪を弄っているのが楽しいという、多少趣味的な部分もある。
「まぁ、気持ちいいなら何よりだ」
「自分でやるのとは、全然違うわね。ちょっと新鮮。
急所を預けてるはずなのに、むしろリラックスしちゃうわ」
「髪は女の命、ってやつか」
命を預けられていると思うと、責任重大だ。
やってることは、髪の流れに沿って櫛を入れているだけだが。
「そういうこと。私だって、結構気を使って手入れしてるのよ?」
「それは、こうしてみるとよくわかる。櫛の通りがいいし、変な癖とかもついてないし」
下ろした髪も新鮮だ。
風呂上がりとか寝る時とかに見てはいるが、やはりツインテールの印象が強い。
「リボンも、大切にしてるんだな」
「まあ、ね。色々なきっかけだったわけだし」
すずめのトレードマークとも言える、黒いリボン。
ヒーローに憧れるきっかけ。俺とのこの関係の、きっかけ。
「じゃあ、仕上げに結っちゃうぞ」
「うん、お願い」
櫛を置き、髪を二つに括ってリボンで留める。
「……いつもより、ちょっと後ろ寄りか?」
「うーん、確かに何か違う感じかも。折角あんたにやってもらったんだから、これでいいわ」
「では、ご満足いただけましたか。お嬢様?」
「ありがとう。気持ちよかったわ」
この笑顔は、嘘じゃないだろう。気を使って言っている風ではない。
マッサージのお返しはこれにて完了。ここからの方がメインだ。
「それじゃあ本題の……ちっと待っててな」
「うん」
戸棚の死角から、“本題”を取り出す。ついでに砂糖控えめのコーヒーも、と。
「ほい。……こういう時は何て言うんだろうな。バレンタインありがとう、か?」
「どういたしまして、って言うのも変かしら。
とりあえず、ありがとう。いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
「へぇ、あんたもクッキーなのね」
「目には目を、クッキーにはクッキーを、ってな」
「仕返しの時に使う言葉よ、それ」
苦笑しながらクッキーを口に運ぶすずめ。
お菓子なんかまともに作ったこともないし、普段の手料理とは違った感慨があるな。
「ん……んん? うん、甘くて美味しい。これ、蜂蜜?」
「ビンゴ。マイハニーにハニークッキーをプレゼント、なんてな」
「そういうこと真顔で言って、恥ずかしくないの?」
「冷静に返されると若干恥ずかしいが、すずめが照れてるのが可愛いから問題ない」
「……うっさい」
頬を赤く染め、軽く目を逸らしながらクッキーを咀嚼する。
こっちもお気に召していただけたようだ。
「すずめのそういうとこも、好きだよ」
「……あんたのそういうとこ、大好きよ。バカ」
そんな憎まれ口すらも、甘い。