新年-よかん-

んで、3つ目。
これで今年の更新は最後、かなぅ。




12月31日23時52分。
俺は神社の参道で行列の一部となっている。


「今年もあと10分かぁ」
「んだな」
隣できちんと着物を着て立っているのは、
俺の可愛い恋人―――夜舞月綾葉だ。
普段はポニーテールの髪を上げていてうなじが色っぽい。
「今年はあっという間だったけど、密度が濃い一年だったなー」
「そうか」
「楽しい時間は早く過ぎるけど、その楽しいことが色々ありすぎたからね」
1年、と言うか4月に綾葉と出会ってからの思い出が頭に浮かぶ。
「今年を一言で表すと、光司、って感じかな」
「……何だそりゃ」
「だって、ずっと光司と一緒だったもん」
「ずっとは言いすぎだろ」
「細かいことは気にしないの。
あたしにとっては光司との時間が一番大切なんだから」
「……あー、そうですか」
堂々と言うなよ。恥ずかしい奴め。
「あ、残り3分だよ」
綾葉が左腕に目をやる。
俺も自分の左腕に視線を落とす。
そこには、全く同型の腕時計。
俺と綾葉が同じ時を刻む証。
「光司、今年最後のキスしよ」
「……あほぅ」
「……ね?」
だからそれは反則だと。
「ったく、しょうがねぇなぁ」
背伸びする綾葉の頬を両手で挟み、そっと唇を重ねる。
5分後に“今年最初”をお願いされる光景が少し脳裏をかすめる。
「へっへー。ほら、一分きったよ」
綾葉の言葉に、互いの腕に目をやる。
「……5、4、3、2、1」
「「あけまして、おめでとう」」
2人の息がぴったりと合う。
「今年もよろしくね。光司」
「あぁ、よろしく。綾葉」
そうこうする内にも列は進み、俺達の番。
無造作に5円玉を遠投し、熱心な綾葉を横目で見つつ二拝二拍手一拝。
無信心ぶりを露呈しつつ、列から離れる。
「光司は何お祈りしたの?」
「そういうのって言わない方がいいんじゃなかったか」
別に叶わなくてもどうってことないが。
「そっか。そだね」
「綾葉は……2人一緒にいられますように、か?」
「はっずれー。それはあたし達の問題だから神様に何とかしてもらわなくてもいいもん」
「それはまた、綾葉らしいと言うか何と言うか」
自分でできることは自分で、か。
「じゃあ、つり目じゃなくなりますように?」
「うーるーさーいー!!」


―――また今年も楽しくなりそうな、そんな一年の始まり。