『無人島 遺跡 スクール水着』

何ですかね、この食い合わせの悪さは。
無人島+遺跡はまぁいいとして。
遺跡+スクール水着とか、何をどうすればいいのかさっぱりです。
ということで逃げました。ついでに、遺跡探検の名目を探すのが面倒だったので彼女らが再登場。
何はともあれ書けた。次です、次。

――超自然現象探究倶楽部。
超能力から心霊スポット、異星人異世界人異次元人まで、現代科学では解明できない現象の真実を見究める。
ありとあらゆる世界の不思議を求めて、東へ西へ歩き回る二人組である。
季節は夏。
学生という本分を疎かにできない超自然現象探究倶楽部にとって、貴重な貴重な長期休暇。
南海に浮かぶ無人島。
考古学的調査はとうの昔に終了し、学術的にも観光的にも価値のない遺跡が、今回のターゲットである。


「うーみーっ!!」
……考古学的調査はとうの昔に終了し、学術的にも観光的にも価値のない遺跡が、今回のターゲットであった。
そしてその件とは全く関係なく、無人島には美しい砂浜があった。
「ちょっとはしゃぎすぎではありませんの? 春香」
夏。南の島。砂浜。美少女二人。
その単語の羅列から導かれるとおりの光景がそこにはあった。
「たまにはこういうのもいいじゃん」
屈託なく笑っているのは、超自然現象探究倶楽部の通称“小さい方”繭瀬春香。
学校指定のいわゆるスクール水着に身を包み、波打ち際を駆け回っている。
「たまには、ね」
ふ、と少し曇った苦笑を漏らすのは超自然現象探究倶楽部の通称“大きい方”叢雲天乃。
こちらも同じスクール水着に身を包み、春香をぼんやりと眺めている。
「もー。遺跡がハズレだったからってそんなに落ち込まないでよ。よくあることでしょ?」
「悪くない条件だとは思ったのですけれど。現実は甘くありませんわね」
この二人、本命の遺跡を放り出して海水浴を楽しんでいるわけではない。
前日、既に重装備で遺跡探索を行い、噂に聞くような古代人の霊にも巨大な原住生物にも会うことなく終了しているのだ。
そして折角の貸切ビーチを堪能したいという春香の提案により、本日は海水浴となった。
「それにしても天乃……また大きくなった?」
落胆する天乃の心中など斟酌せず、“叢雲”という流麗な墨跡を歪ませる二つのふくらみを指摘する。
ちなみに、画数が多いせいで平仮名になっている“まゆせ”という春香の丸文字も、平均以上に歪んでいる。
「そうですわね。新しい下着がいりますし、動きやすいとは言えませんし。素直に喜べるものではありませんわ」
「だねぇ。そだ、今度水着でも買いにいこっか? 真実の探究もいいけど、普通の女の子らしい幸せも追求しなきゃ」
「まったく。春香は欲張りですわね」
春香と話している内に、天乃の苦笑が柔らかいものに変わっていく。
退屈で平坦な日常を嘆く天乃にとって、何よりも大切なパートナー。
「天乃にはどんな水着が似合うかなー。やっぱり大人っぽく黒ビキニとか」
「そうね、春香には……貝殻の水着とか」
「うぇ!?」
「普通のお店で売っているものなのかしら」
「冗談だよね!?」
ごく真面目な表情で、春香を辱める算段をする天乃。
本気の度合いを測りかねた春香は、目に見えて動揺している。
「えぇ、冗談ですわ。もちろん、春香が着たいのならば選ぶのは手伝うけれど」
「ぜ、全力で遠慮させてもらうよ」
「そう。残念」
台詞とは裏腹に、残念さの欠片も見せずにゆるふわウェーブの髪をかき上げる。
「あゔー……天乃ってたまに意地悪だよね」
「春香だけ特別、ですわよ」
「そりゃあ、あたしだって天乃は特別だよ」
やりこめられて頬を膨らませていた春香が、一転して気の抜けた笑顔になる。
悠然と、あまり感情の波を表に出さない天乃とは対照的。
だからこそ、上手くかみ合っているのかも知れない。
「さ、そろそろ泳ぎましょうか」
「おっけー、ごーごー」
笑顔の天乃と笑顔の春香。
超自然現象探究倶楽部の貴重な一幕である。