鍛錬-もがき-

えー、一週間ぶり。
書いてることは書いてるんで気が向いたら載せていきます。




俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校2年生だ。
夏休みも残り半分ほどになった頃。
俺は板張りの床に寝転がっていた。


「……久々なんだから少しは手加減しろよ」
動機、息切れ。激しい運動のせいで頭が痛い。
「ふん、怠けていたお前が悪いのだろう。自業自得、だ」
涼しい顔で隣に座っているのは、俺をボロボロにした張本人―――結城翔。
翔はここの道場主の息子で免許皆伝の腕前。そして今の俺の師匠だ。
「それで、どういう風の吹き回しだ?ついに愛想を尽かされたか」
まあ、最近は俺に恋人ができたせいであまり顔を出しておらず、
こんな皮肉を言われる訳だが。
「そんなんじゃねーよ。暇潰し……っつーか、逃避だな。
主に課題という名の現実から」
「お前は昔からそうだな。何をするにも熱意が感じられん」
翔が呆れたように言う。
「んだな。勉強なんかできればやりたくねーし。
武道(こっち)も趣味だから強くなる気ねーし」
「まったく。折角良い素質を持っていると言うのに、努力せねば宝の持ち腐れだぞ」
「そうは言うがね……明確な目標がないと難しいんだよ、っと」
息も整ってきたので勢いをつけて立ち上がる。
「逃げてるだけじゃ課題も終わらないし、そろそろ現実と向き合うことにするかね」
「そうか。また何かあればいつでも来い。大体俺は道場にいるからな」


翔と別れ、道着から着替えて外に出る。
「熱意、ね……」
空を見上げて漫然と歩く。
今は割と開き直っているものの、中学の頃は向上心の無さに本気で悩んだこともある。
結局、どうにかなる問題ではなかっ
「光司ぃ〜!」
ドムッ
「うっ」
背中に何かが突っ込んでくる。
「……綾葉?」
「へっへー。すごい偶然だね。運命って奴?」
ポニーテールを揺らして心から嬉しそうな顔をする美少女。
俺の可愛い恋人―――夜舞月綾葉だ。
「こんな所で何してんの?買い物?」
「ちょっと道場に顔出しにな。綾葉は?」
「あたしは」
「綾葉〜、ちょっと、待ってよ」
向こうから駆けて来る少女。
「あ゛、唯香……」
「はあ、いきなり、走り出さないでよ、もう」
俺とも顔見知りの綾葉の友人、中山唯香さん。
基本的に綾葉に振り回される役だ。
「お疲れ様です、唯香さん」
「こんにちは、光司君。
綾葉はホント光司君のことになると見境無いんだから……」
「あはは、ごめんごめん」
「2人で買い物か」
「うん。可愛い服買ったから次のデート楽しみにしててね」
「綾葉ったら、光司君の為に可愛くなるんだー、ってうるさいのよ」
「あー!それは言わない約束ー!」
「そいつは光栄だな」
「ああ、もう。まだ回るお店あるからそろそろ行くよっ」
むくれる綾葉が唯香さんの手を取る。
「あら、そんな照れなくってもいいじゃない」
「うーるーさーいー。じゃあ、光司。またねー」
「ん、またな」
「じゃあね……って、綾葉、引っ張りすぎー」
綾葉の勢いに圧倒されつつ2人を見送る俺の頭に、ふと閃くものがある。
「俺の為……か」
明確な目標が設定できないゆえの俺の熱意の無さ。
……綾葉の為、じゃ駄目か?
少し、自問してみる。
何でもこなせる綾葉と、何をするにもある程度以上のやる気が出ない俺。
綾葉と釣り合う位には……頑張れる。そんな気がする。


―――綾葉のおかげで一筋の光明を見出した夏真っ盛りのある日。