家族-きずな-中山家の場合

今日も今日とて番外編。
元は美月っぽくなるはずだった成れの果てをお楽しみ下さい。




俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校2年生だ。
いつもと変わらない朝。
俺はのんびり歩いても遅刻しない時間の通学路をのんびり歩いていた。


「あら、光司君?」
次々と学生に追い越される中、2人組に声をかけられる。
「あ、唯香さん。おはようございます」
片方は3年生。
俺の恋人である夜舞月綾葉の友人、中山唯香さんだ。
「おはよう。結構ゆっくりなのね」
もう片方は1年生。
見覚えのない顔だが、口元が唯香さんに似てる気がする。
「おはようございます」
「唯香さん、こちらのお嬢さんは?」
「光司君は初対面だっけ。私の妹で」
「中山瑠璃です。姉がお世話になってます」
ぺこりと礼儀正しくお辞儀する瑠璃ちゃん。
「えーっと、俺は」
「知ってます。空沢先輩、ですよね」
「……俺って有名人?」
「綾葉が家に遊びに来たとき、色々吹き込んでたからねー」
「綾葉か……歪んだイメージが植え付けられてそうな気が」
まるで自分のことのように得意気に話す綾葉の姿が目に浮かぶ。
「多分、光司君の予想通りよ。惚気と自慢が9割」
うんざり、といった表情の唯香さんと苦笑する瑠璃ちゃん。
「すみません。なんか、俺のせいで迷惑かけてるみたいで」
「いいのよ、光司君のせいじゃないわ。
綾葉の頭が光司君一色なのが悪いのよ」
「それは……コメントしにくい所で」
言いたいことがよくわかるだけに。
「でも、空沢先輩の話をしてる時の綾葉先輩ってすごく幸せそうな顔しますよ。
本当に好きなんでしょうね」
「う……ん」
三者に改めて言われるのも恥ずかしいものがあるな。
「あ、もしかして照れてます?」
「……勘弁してくれ」
悪戯な笑みを浮かべる瑠璃ちゃん。
「ふふ、綾葉先輩の言ってた通り
……って、姉さん、時間は大丈夫?」
何かに気付いた瑠璃ちゃんが時計を見る。
そして、唯香さんも時計を見て、
「……あぁっ!」
「もう、しっかりしてよね」
「ごめんなさい、光司君。私達急がないと」
「失礼します、空沢先輩」
ばたばたと、瑠璃ちゃんが引っ張るような形で駆けて行く2人。
「慌しいことで」
のんびり歩きながらそれを見送る。
中山瑠璃ちゃん、か。
唯香さんよりしっかりしてそうだな。
……まあ、ちょっと小悪魔な感じもするけど。


―――そんなこんなで、中山姉妹の日々は過ぎて行く。