『恋愛授業:互いの名前を呼ぶ』

うん、まぁ、これが一番書きやすいですよね。
しかし例によって例の如く甘さが足りない。
ヒロインのキャラが固まっていないのがどうしようもない。
キャラ固めてから書けよって話ですね。

「じゃあ、今日もよろしくお願いします」
「うん。こちらこそよろしく、筑波」


恋愛授業。
元女子校、それもガチガチのお嬢様学校であった愛嬌学園の特異なカリキュラム。
卒業後に異性関係で悩まぬように、というある意味ではとても実になる勉強。
共学となった今でも続く伝統。


「いつもよりは簡単そうかな」
「っすね」


児玉つばさ先輩。ほぼ固定のパートナー。
親しい友人が恋愛授業のクラスにいない、寂しい仲間。
最初は余り者同士の感覚でしかなかったが、
綺麗な先輩と擬似恋愛をして、何も感じないわけがない。


「えーっと、じゃあ……」
「“つばさ”、だよ」
「わかってますよ。名前忘れるほど失礼じゃないっす」
「なら、筑波からどうぞ」


促され、一呼吸。
女子の。先輩を。名前の。呼び捨てで。
慣れない行為ではあるものの、羞恥プレイ紛いの今までの授業に比べれば軽い。


「……つばさ」
「っ、あ、うん」
「照れてます?」
「まあ……いや。自分で体験した方がわかるよ。
……新司」
「……ぇと」


なるほど、これは。
照れも確かに含まれる。しかし、それだけじゃない。
呼び方を変えただけで、何とも言えない感情に襲われる。
恋愛授業として扱われる意味を、心で理解した。


「気恥ずかしい、かな。表現しにくい感情だね」
「こっぱずかしさは大きいっすね」


二人で書道だのおまじないだのとは別ベクトルの恥ずかしさだ。
それが、決して嫌じゃない。


「はいはい、普通におしゃべりしてもいいけど、ちゃんと名前で呼びなさい?」
「……うぇい」


恋愛教師から注意されてしまった。
まぁ、なんだ、その。
名前で呼べばいいだけだからハードルは低いはずだ。


「ということらしいっす……つばさ」
「真面目にやろうか……新司」
「つばさは、人を名前で呼ぶことってあるんすか?」
「言われてみると、新司が初めてかも知れない。
仲が良くても大抵は名字で呼ぶからね。新司は?」
「男子は半々って感じっすけど、女子は、まぁ、つばさだけ」
「それは、うん、光栄だね」


うぉぉぉ。普通の世間話なのに。いや若干ときめく話ではあるけれど。
先輩に名前を呼ばれるたびにドキがムネムネする。
……恐るべし、恋愛授業。


「そうだ。これからも名前で呼んでもいいかな?」
「ぅ、あ、はい、ご随意に」
「私のことも、名前で呼んでもいいよ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて。これからもよろしくお願いします……つばさ」
「うん。こちらこそよろしく。新司」