看病-やまい-

予告通りの風邪ネタ。
普段とはちょっと違う作風になった気もしますが理由はお察し。





俺の名前は空沢光司。
そこそこの学校に通うごく普通の高校2年生だ。
期末試験も近いある日。
俺はベッドの上でごろごろしていた。


「げほ、ごほ」
まあ、風邪をひいている訳だが。
さすがに昼過ぎまで寝ていると眠気もなく。
「うぇ……だりぃ」
結構どうしようもない状態だ。
―――コンコン。ガチャ
形式的にノックだけして誰かが俺の部屋に入ってくる。
今この家にいるのは俺の他にもう一人だけ。
俺の恋人―――夜舞月綾葉だ。
おかゆ作ったけど、食べれる?」
「ん……食う」
俺の風邪をどこかから聞きつけお見舞いに来た所、
家に誰もいないことを知ったので看病してくれている。
「自分で食べれる?食べさせてあげよっか?」
「いいよ……ごほ、自分で食える」
のそのそと起き上がり、器を受け取る。
「食欲なくてもちゃんと食べて体力つけなきゃダメだよ。
そのままで薬飲むと胃が荒れたりするし……」
「……料理できねーんだからしょうがねぇだろ」
インスタント程度ならできるけど、それは料理とは呼ばん。
「もう。ホントお見舞いに来てよかった」
「俺もそう思うよ」
「光司がいないと寂しいんだから、早く治してよね」
「げほ……善処する。……ごちそうさま」
「あ、うん。これ薬とお水」
綾葉から手渡された薬を水で流し込む。
「汗とかかいてない?拭いてあげようか?」
「大丈夫だよ……ごほ、ん、んん。そこまでしなくても」
「遠慮しなくていいんだよ?
汗かいたらきちんと着替えなきゃだし、欲しい物があったら何でも言って」
「うん……ありがとう」
何だろう、この……あぁ、
「……ダメ亭主と世話焼きな妻って感じか」
「……妻?」
綾葉が自分を指差す。
「お前がダメ亭主な訳ないだろ」
「いや、その、そうじゃなくてさ。
そういうこと言われると、照れる」
「あー……」
確かに普段ならこういう台詞は言わないか。
熱でちょっとやられてんのかな。
「んっと……何でも言って下さいね。あ・な・た」
「……そいつは恥ずかしい」
「光司が先に言ったんだから。
予行演習だと思って、ね」
予行演習、か。
俺と綾葉が実際にそういう関係になる未来が存在するかどうかはわからない。
でも今は、綾羽の優しさに甘えていたい。


―――共働きの両親に感謝してもいいかな、と思った冬の日。