連理-いつも-

ネタがなくても書けるもんですねえ。
こいつらは毎度勝手に動き回りすぎです。

俺の名前は空沢光司。
それなりに名の知れた大学に通う、大学三年生だ。
製菓業界によるチョコレート配布推進も俺には関係ない。
イベント事だろうがこの上なくいつも通りだ。


「今年はトリュフと、余ったガナッシュをはさんだクッキーでござーますです」
「その口調は何だ」
何かある度にテンションの上がる俺の恋人――夜舞月綾葉は本日も絶好調である。
「まあまあ、細かいことはおいといて。食べて食べて」
「んむっ」
半ば無理矢理、トリュフを口に放り込んでくる。
クーベルチュールに歯を立てると、内側からなめらかなガナッシュが舌の上に溶け出す。
などと玄人気取りのコメントを吐くわけもなく。
「うまいよ」
「でしょでしょ」
この程度である。
とりあえず手作りとしてはあまりに規格外のレベルだということははっきりしている。
「クッキーもどうぞ」
「んむっ」
今度はクッキーを放り込んでくる。
サクサクとしたクッキーとガナッシュの舌触りの混合が以下略。
「こっちもいけるな」
「うん。余った分の割には上出来、と自画自賛
楽しげにポニーテールが揺れる。
うまいうまいと言いながら食べたり食べさせたり食べさせられたりしていれば、綾葉の力作もあっという間に消費されてしまう。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした。光司、チョコついてる」
「どのへん?」
「こ、こ」
言いながら、頬に口付けてくる。
「……またお前はさらりとそういうことを」
「チョコついてたのはホント。キスしたかったのもホント」
「ったく、しょうがねぇなぁ」
甘えたそうに預けてくる身体を抱きとめる。
何でこう、女の子って柔らかいんだろうなあ。
……女の子?女の子。うん。
「うにゃーん」
「猫化すんな」
「わふわふ」
「犬化もいらん」
「ったく、しょーがねーなー」
「俺かよ」
完全にバカップルである。自覚はある。
「へっへー」
「はいはい」
会話がどんどん減っている。というか、少ない単語で大体意思疎通ができてしまう。
付き合いの長さというのは恐ろしいもんだ。


――例によって例の如く、何の代わり映えもしない一日。